誰もが人生にしがみついている。
誰もが自分にしがみついている。
その手を放す。
力を抜く。
力を抜けば浮く。
「浮いて 待て」
小学生がプールの時間に習う。
無力になる。
もともと無力なんだから。
わたしたちは無力でしょ?
今、こうして生きているけれど、今日までの間に死んでい
たとしても、別に不思議ではない。さまざまの病気、災害、
交通事故、凶悪犯罪、戦争、テロなど、常にコントロール出
来ない危険にさらされているのですから、今もって生き続け
ていることは、たまたまです。自分の力で、全てのリスクを
回避して生きているのではありません。飛行機に乗っても、
電車に乗っても、命を預けているわけですから。
でも、わたしたちは自分の力で生きて来たと、すぐに考え
ます。「自分には、生きる力がある」と思いたいんですね。
あると言えば、あるのですが、そんなの状況次第では何の
役にも立たなかったかも知れないんです。 運良く、そんな
状況に出くわさなかっただけなのです。
頭が良いとか、運動能力が高いとか、忍耐力があるとか、
人によって色々な自信があるでしょうが、そんなの運でし
ょ。
障害を持って生まれたらどうなんでしょう? 虐待されて
育ったらどうだったんでしょう? 紛争地帯に生まれたら、
望む教育を受けられるでしょうか? 努力でどうにか出来る
事ではありません。自分に今ある能力は、たまたま手に入れ
たものなのです。そして、その能力は条件が合う時にだけし
か、役には立たないものです。ですが人は、その力を自身で
過大評価したりします。それは、生きて行くうえでの不安を
減らしたいから・・。すべてが運や偶然でしかないというの
は、心もとなさすぎるから、何か確固としたものが欲しい。
だから自分の力が、生きて行く為に有効だと信じたいのでし
ょう。
そして困難な状況に直面した時も、自分の力でなんとか
しょうと、必死になって頑張る・・・。頑張りますが・・、
そんなに上手くもいきませんよね。 なぜでしょう?
きっと、自分の能力を超えているか、状況に合っていない
のでしょう。つまり、無駄な努力という訳です。
無駄な努力は、ムダですよね。
なのに、わたしたちは無駄な努力を続けてしまいがちで
す。動くのを止めると、状況に飲み込まれてしまいそうに感
じてしまうんです。でも、もがけばもがくほど、消耗してし
まいます。
だから、 「浮いて、待て」 なんです。
今は小学生が、学校で習います。「水に落ちたら、無理せ
ずに力を抜いて、仰向けに浮いて救助を待て」と。
実際にそうして助けられた例が出て来ています。
パニックを起こして無駄な動きをするのが、一番ヤバい。
パニクると、風呂でも溺れてしまいます。
人生も同じだと思いますね。
力を抜いて、状況に身をまかせて、状況の力に持ち上げら
れて行く。 無力になる。
どうせ無力なんだから。
それが、本当なんだから。