2019年3月12日火曜日

「復興」が、人を迷わせる



 人間って、ホント、歴史から学ばないよね。 

 《 人は歴史から学ばないということを、私は歴史から学

んだ 》

 以前、そう書いた。

 何の話かというと、さっき東日本大震災からの復興の問題

点についてテレビでやっていて、阪神大震災の後と同じ問題

をかかえているのを知った。

 どうせそうなるんだろうとは思っていたのだけど、「いっ

たいなにやってんの」と思うね。

 阪神大震災後の復興策の失敗やゴタゴタ、後手後手を他の

自治体は知っているはずだし、知らなくても被災地の担当部

署や、再開発の当事者の住民に聞けば分かることなのに、阪

神大震災の時と同じことをやって「問題だ」と言っている。

 「孤独死」がどうとか、「住民が戻らない」とか、この二

十年何をしてたんだろう。学びなさいよ。
 

 阪神大震災の後、何年も、「この震災を教訓に・・」とか

「この震災から学んで・・」とかさんざん言われて、「われ

われ被災者は、“教訓” でしかないんだな」と思っていた。

それでも、「まぁ、“教訓” になるのなら、それはそれでい

いか」と、生身の身体で震災後を生きながら、そんなことも

思っていた。ところが、結局 “教訓” にもなっていないんだ

ね。ほとんど「話のタネ」で終わってたんだね、やっぱ

り・・・。ホント、人間ってやつは・・・。


 「お涙頂戴」の人情ネタや、「理想論」の再開発や復興施

策を語ることを否定しはしないけど、人間って不合理で情緒

的な行動を執るものですよ。突発的に自分の進路を塞がれた

り変えられたりしたらなおさらです。

 人は理屈で生きているんじゃない。

 “生(なま)” の感情や衝動に動かされて生きているんで

す。ただ、それを都合の良いように合理化するだけです。先

に「合理性」を持って来て、それに合わせようとするのな

ら、それ相当の懐の深さというか、人の「不合理」をも抱き

込む “遊び” が必要です。


 それに、「復興」だとか「元の暮らしを取り戻す」だとか

言って、感情論で災害後の人生を生きようとする人に対して

は、その感情を汲んであげつつ、冷静に暮らしを見つめる視

点を持てるような関わり方をしてあげられないか?


 「合理性」に寄り過ぎても、「感情」が先走り過ぎても、

後で大きな問題を抱えることになるのがほとんどですよ。

 人の暮らしは「生もの」ですし、暮らしを取り巻く社会は

「無情」です。

 その相反するものの間でバランスを失わない為には、良い

意味での “中途半端さ” や ”テキトーさ” が必要だと思いま

すね。


 「復興」

 「元の暮らしを取り戻す」

 災害が起きた時の決まり文句ですね。

 こんなことを言うと嫌われるでしょうが、元には戻りませ

んよ。

 あんなことが起っちゃうと、人の暮らしは大きく変わって

しまう。戻せない。

 「変わった」ことを前提に、新たに生きるしかないんで

す。「変わった」のに、それを受け入れずに過去や自分の人

生のイメージにこだわり続けると、当然問題を生み出しま

す。

 阪神大震災の後、「元の生活に・・・」と急いで自宅を再

建した人の多くは、その後の区画整理の対象になって立ち退

きを迫られたり、二重ローンを抱えてどうにもこうにもなら

なくなったりして、自殺した人もいる。ほとんど語られませ

んけどね。

 東日本大震災で被災した人たちには、その轍は踏んでもら

いたくなかったですけど、同じような事が起っている。


 「八年も経ってからそんなこと言うな!」と思われるしれ

ませんね。

 でも、阪神大震災後に “生身” で生きていた私たち

は、“教訓” の「添え物」の情報として、歴史の中に埋め込

まれました。それは、なにやら悔しさを覚えることでした

が、先に書いたように「“教訓” になるなら、それならそれ

でいいか」と思ったのです。ところが、“教訓” にさえなっ

ていなかったことが分かってしまった・・・。“教訓” にし

てくれるんじゃなかったのか?

 「復興」という言葉が、そらぞらしく、胡散臭い・・・。
 

 生きていると理不尽なことは起こる。ほとんど、どん底ま

で落とされたりもする。二度と元には戻れなかったりもす

る。世界も自分も変わって行く・・・。

 変わる世界に翻弄されない為の最善の方法は、自ら変わっ

て行くことしかない。

 どんなに “今” が愛しくても、誰も変わる事を止められな

い。


  「復興」よりも、「改興」すべきじゃないかと思う(もち

ろん、そういうことも行われてはいるけどね・・)。

 「元の暮らし」ではなくて、「新しい暮らし」を築いて欲

しい。



 嫌われることを承知でもう一度言わせてもらいますが、

には戻れないんです。人生は。



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