2017年5月6日土曜日

安心・安全原理主義

 相変わらず、北朝鮮の「ボクを見て!ボクを見て!」のパ

フォーマンスに大騒ぎをしていますが、先日また北朝鮮がミ

サイルを撃ち、その一報を受けて、東京メトロなど一部の鉄

道会社が電車を止めました。あのニュースには本当に呆れま

したね。「“Jアラート”も出ていないのに、バカじゃねぇ

の?」って。

 デッドボールが怖いからと、バッターボックスに立たない

野球選手は一生試合には出られないでしょ?

 生きて、暮らしていると、大なり小なり常に危険にさらさ

れているわけですよ。当たり前ですが。

 ところが、この頃の日本人ときたら、この「危険」をゼロ

にしたがっているとしか思えません。

 「安心・安全」という御題目を耳や目にしない日は有りま

せん。テレビを点けても、ネットを観ても、スーパーに買い

物に出かけても、職場や学校に行っても、政治家や行政の言

葉のなかに、街中のポスターに、ありとあらゆる所に「安

心・安全」という言葉が溢れています。ビョーキですね。ま

ったく。
 

 そりゃぁね、安心・安全を求めるのは分かりますよ。人間

に限らず、全ての生き物は安心・安全を求めていますよ。

 昆虫の擬態だってそうだし、小さい魚が珊瑚礁や岩礁から

離れないとか、スズメがすぐに逃げるのだってそうです。し

かしね、今の日本人の「安心・安全」は余りにも度を越して

います。

 国は、飲食店での生レバーの提供を禁じましたよね。

 私は生レバーなんか食べませんけど、要らぬお世話でしょ

う? 一体、生レバーで死ぬ人が年に何人いるのですか?

風邪薬の副作用で死ぬ人の方が多いでしょう? 何故、風邪

薬は禁止しないんですか? “風邪という危険”から身を守る

為ですか? 

 私は、薬というものは目薬ぐらいしか使いません。

 特別に健康なわけではありませんよ。あっちこっち痛い

し、内臓の調子が悪くなったり、頭が痛くなったりします

が、たいていの場合ほっときゃ治るからです。

 インフルエンザの予防接種もしたことがないし、健康診断

も受けません。(面倒くさいでしょ?)

 少々、具合が悪かったって、寝てりゃぁ済むんです。

 ところが周りを見てると、まぁ、みんなよく薬を飲みます

ね。「頭が痛い」「おなかが痛い」「風邪引いた」なんて言

って。

 あゝいうのって、不快であることよりも、「自分の身体

が、自分の意志のコントロールから外れてる」ことが、嫌な

んじゃないでしょうか? 

 自分の思い通りにしたい。

 でも、思いもかけずに身体の具合がおかしくなる。

 そんなの嫌だ。

 気持ち悪い。

 気持ち悪い事は、排除。

 だから、薬を飲む。
 

 身体を信用していないんですね。

 というか、身体を支配したいんでしょう、「アタマ」が。
 

 私は、身体の事は身体に任せます。たいてい大丈夫ですか

ら。(虫歯が痛んだり、酷いケガをしたりしたら、もちろん

医者にかかります。石器時代じゃありませんから)アタマ

で、身体の自律性を何とかしようなんて、おこがましいです

よ。

 この冬もノロウイルスに関してのニュースが、たくさん流

れましたが、食中毒菌(ウイルス)の中でも弱い症状しかも

たらさないノロに対しての、あの過剰反応は何事かと思いま

す。それに、ノロは他の病原体に比べると、とても防ぎ難い

ものです。完全に防ごうと思うと、相当なコストが掛かる事

でしょう。にもかかわらず、ノロの食中毒を出したら、即営

業停止。評判も落ち、関係者は「能無し」か「無責任」扱

い。

 保険所は、常識的な衛生管理が出来てるかどうかを観て、

クリアしていたら、しっかりとした後処理を指導・確認し

て、マスコミは風評被害が拡大しない様に配慮してあげるべ

きだと思います。ほとんどの飲食店や給食センターは、クリ

ーンルームの様な環境を持てませんからね。それとも、人々

はその為のコストを価格に上乗せしてもよいのでしょうか。

 それと、食品の異物混入の問題。

 「お菓子に、一・二匹の虫が入っているかも」とか、「ビ

ニール片が混入した」とか言って、何万・何十万もの商品を

回収したり。

 以前、サラミソーセージがマイブームになって、半年ぐら

いの間、同じ商品を食べていたのですが、ある日パッケージ

を見ていると、「ケーシングは取り除いて、お召し上がり下

さい」と書いてあった。私は、ケーシングごと食べられるタ

イプだと、かってに思い込んで、そのまま食べ続けていまし

た。この様なケーシングはプラスティックです。それを半年

食べ続けたんですが、当然のことながら、何の異常もありま

せんでした。トマトの皮みたいな物ですね。

 虫についても、あんな物は不快なだけで、本当に健康被害

が出る様な虫は、ごく限られていますし、そういった虫が混

入する確率は、ほぼゼロでしょう。

 それに、農産物に混入する虫や、魚介・食肉に入る寄生虫

などは防除しきれないので、(完全に防ごうとすると、人が

病気になるくらい農薬を使ったりしなければならない)わた

したちは日々かなりの数の虫などを口にしています。   

タンパク質の補給ですね。

 ところが、これらの虫が見えてしまえば、もうダメなので

す。全品回収。

 二・三年前に、カップ焼きそばに虫が混入し、何百万食だ

ったか回収して、工場は半年ほど操業停止。倒産こそしなか

ったから良かったけれど、従業員はどんな日々を送ったので

しょう? 給料・ボーナスはどうなったのでしょう? 

 もし、倒産していたら、その焼きそばを好きな人は二度と

食べられなくなっていたのです。たかが虫で。

 「虫を入れる方が悪い」と言う人も居るでしょう。

 でも、何万・何十万という商品を何十年も日々作り続けて

いるのです。ほんのごくごく僅かな確率で虫が入ってしまう

ことがあっても、許されるのではないでしょうか? 不快だ

というだけなのですから。人間のする事に完全はありませ

ん。

 もし異物が入っていたら、その当該商品を買った人にだけ

誠実に対応すれば、それでいいんじゃない? 全品回収だな

んて、常軌を逸している。日本人の“もったいない精神”は何

処へ行った?(昨年、マルハニチロの「さんまのかば焼き」

の缶詰に、金属片が混入した可能性があるとして、2800万

缶を回収したことがありました。2800万缶ですよ! 私も

当する商品を買っていましたが、面倒くさいので、そのま

食べました。美味しかったです。しかし、死んだサンマも


かばれまい。だって、回収した商品は当然廃棄でしょ。開


た口が塞がりません。10秒ほどですが・・)

 

 ほんとに、日本の「安心・安全」は異常です。

 寛容さに欠けます。

 おおらかさがありません。

 どこまで行っても、わたしたちの生を取り巻くリスクはゼ

ロには成りません。

 むしろ、あまりにも「安心・安全」を求めすぎて、非常に

キツイ管理社会を生み出し、そのストレスがさまざまな事

件・事故に繋がり、かえって病気を増やしたりしていると、

私は信じて疑いません。いじめや鬱病の元にだって、なって

いることでしょう。


 世の中には、さまざまな原理主義があって、それぞれ大き

な問題を引き起こしていますが、今の日本において最も猛威

を振るい、人々を苦しめているのは、「安心・安全原理主

義」でしょう。とっても、気持ち悪いです。

 最近は「安心・安全」という言葉に触れると、反射的にイ

ラッとしてしまいます。

 「それが、何をもたらしているのか、

             考えた事あるのかよ」

 そう思うんですね。

 
 今、多くの日本人が求めているのは、ほんとは安心・安全

ではないだろうと思います。(「ラーメンに虫が入ってい

た」と騒いでいるのが、ボクサーだったりして)

 「安心・安全」という言葉の裏に隠されているもの。それ

は、「想定外の事に、自分の人生を乱されたくない」「自分

に起こることは、全て自分がコントロールしたい」という、

「アタマ至上主義」でしょう。

 「自分の思い通りにするんだ」という傲慢が透けて見えま

す。

 でも、何もかも思い通りになる人生って、面白いんでしょ

うか?

 すべてが想定通り、すべてが計画通り、何もかもが細かく

コントロールされている・・・。私には、気持ち悪い世界に

思えますが。


 《 思い通りになると、気持ちイイよね。

   でも、「思い通り」ばっかりやってると、     

   「思いのほか」って喜びを逃がしちゃうんだよね 》


 なんて、思いますけどね。


 なんでもムチャクチャでいい、なんて言っていませんよ。

先に書いた通り、すべての生き物が安心・安全を求めていま

すからね。程度問題だということです。

 やり過ぎが、却って害をもたらすのは何事にも共通です。

 そして、日本の「安心・安全」は、やり過ぎにも程があり

す。この状況を異常と思わない人が、異常です。


 そのうち、そう二十年ぐらい先。

 時の、総理大臣か厚生労働大臣が、こんなコメントを出す

かも知れません。


 「生きていると、さまざまなリスクがあり、これらをすべ

て避けることは容易ではありません。ですから、国民の皆様

におかれましては、なるべく生きない様にして下さい」と。


 もうすでに、国民の何割かは、「生きていない」と思いま

すけどね。今。




 

0 件のコメント:

コメントを投稿