人は、なぜ嘘をつくのか?
どんな正直者であろうとも、嘘をつかずに暮らして行くこ
とは出来ないだろう。
「嘘」「ごまかし」「すり替え」「隠し事」など、これら
をまとめて〈嘘〉としておきますが、わたしたちは毎日の人
との付き合いの中の、いろんな場面で、いろんな形で〈嘘〉
をつきながら暮らしています。それも、人に対してだけでな
く、自分自身に対しても〈嘘〉をつきながら。
日常の場面でわたしたちがつく〈嘘〉は、本人もほとんど
意識しない程度の小さなものですし、誰かを傷付けるような
ものではありません。むしろ、人を傷付けたりして、「人と
の関係を悪くしたくない」という意識が働いて〈嘘〉をつき
ます。つまり、本当の事を言うと問題が起きると判断した時
に、ごまかしたり、隠したり、嘘をついたりするんですね。
こんなことは、誰でも分かっていることだと思います。
「この状況で本当のことを言ったら、大変なことになる」
そんな想いで、嘘を言ったり、ごまかしたりすることは、
誰でも経験するし、意識していることだと思いますからね。
「関係を壊したくないから〈嘘〉をつく」
そう考えて、“自分が嘘をつくこと” に正当性を持たせよ
うとする人は多いでしょうね。実際、人が〈嘘〉をつく心理
はそうだと思います。
ただ、「関係を壊したくない」というよりは、「自分を守
る為」という方が、より本質に近いでしょう。
本当のことを言うと、人から「非難」「嘲笑」「攻撃」な
どを受けそうだと思う時、それを避ける為に〈嘘〉をつく。
もっとザックリ言えば、「ホントのことを言ったら怒られ
る」と思って〈嘘〉をつく。
人が〈嘘〉をつくのは、怒られたくないからです。
わたしたちは嘘をついて、それがばれると怒られますね。
そのことから、一見〈嘘〉が先にあって、その結果として
「怒られる」という順序に見えますが、実は逆です。
それぞれのシチュエーションでは、〈嘘〉→ばれる→「怒
られる」という事ですが、そもそも人が〈嘘〉をつくことを
覚えるのは、「怒られる」という経験が先にあるからです。
“自分が、ある行為をして、その事を怒られた”
そういう経験を繰り返すうちに、どの様な状況だと「怒ら
れる」のかということを、人は覚えて行きます。
そして、その経験を元に “自分が怒られそうな状況” だと
判断した時に、「怒られる」のを回避しようとして、〈嘘〉
をつく。そうして、“嘘をつくことによって、人を怒らせる
ことを回避する” という手管を身に付けてゆく。
「自分の行為を怒られた」という経験が、 “嘘をつくこ
と” を、人に覚えさせます。〈怒り〉が〈嘘〉を生むので
す。
そして、〈嘘〉がまた〈怒り〉を生み、〈怒り〉がさらに
〈嘘〉をつくことを助長させるという悪循環が生じます。
その結果、わたしたちの人間関係の中には、大小さまざま
な〈嘘〉が埋め込まれています。
〈怒り〉が〈嘘〉を生みます。
もし、〈嘘〉を無くしたいのであれば、先に〈怒り〉を無
くさなければなりません。
人を批判し、嘲笑し、責任を追及するようなことをやめ
て、お互いが「ホントのことを言っても、自分が否定される
ことは無い」という安心感を持つ事が出来なければ、人が
〈嘘〉つくことは止められないでしょう。
けれども、〈怒り〉を無くすことは、〈嘘〉を無くす以上
に難しい。
人は「怒る」ものです。人は、“自分” と “自分の世界” を
否定されたり、不安定にされると〈怒り〉を覚えます。その
根は深い・・・。
〈嘘〉と〈怒り〉はセットになっています。
どちらかがあれば、ちょっとした事で、すぐにもう一方も
生まれます。〈嘘〉も〈怒り〉も非難され、否定されること
ですが、セットになっていますから〈嘘〉も〈怒り〉も同罪
です。「どちらが先でどちらが後か」などと非難しあうの
は、単なる駆け引きに過ぎません。不毛ですし、本当に問題
にしなければならないのは、〈嘘〉と〈怒り〉を生み出すさ
らなる原因である、〈否定〉です。
人は、「否定」されて怒り、「否定」されたくなくて
〈嘘〉をつく。〈嘘〉と〈怒り〉といったネガティブなこと
の根本には、「自分を否定されたくない」という、人の悲し
い切望があります。
加えて、〈否定〉が生み出すものは、〈嘘〉と〈怒り〉だ
けではなく、あらゆるネガティブなものが、〈否定〉から生
まれて来ます・・・。
「悲しみ」「淋しさ」「挫折」「敗北」「後悔」「妬み」
といった感情。
「ケンカ」「差別」「嘲笑」「無視」「テロ」といった行
動。
〈否定〉が “諸悪の根源” と言っても過言ではないでしょ
う。
人が何か
としてネガティブなものが、この世に生まれて来ます。
この世から、いつまでたっても “ロクでもないこと” がな
くならないのは、わたしたちの〈エゴ〉が、「否定するこ
と」が大好きだからです・・・・。
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