2018年9月17日月曜日

樹木希林さんの真っ当さ。


 昨日、女優の樹木希林さんが亡くなったという報道があっ

て、今朝はワイドショーでその話を長く取り上げていた。


 今までの希林さんの発言を取り上げて、感心したり驚いた

りしているわけだけど、私はさほど思わない。希林さんの語

り口が面白くて好きだったけれど、彼女の言われていたこと

は真っ当なことばかりで、それを「変わってる」とか、「考

えもしなかった」とか言って感心する方が、バイアスのかか

ったものの見方をしているんだと思う。


 ほんとに面白い人だったと思うけれど、私が希林さんを好

きだったのは、ジョークが言える人だったから。


 日本人はジョークが言えない。

 シャレは言えても、ジョークを言えないし、理解するのも

ヘタクソだ。日本人でジョークを理解するのは 1 %未満だ

と思う。この先も、日本にジョークは根付かないだろう。


 希林さんの言うことは真っ当だ。けれど、それが世間では

真っ当ではないことを、本人はよく知っている。

 世間の人が、真っ当な事を真っ当でないと思い込まされて

いたり、無用な怖れを抱いて真っ当な事から目をそらしてい

て、そのせいでいろんな困りごとを抱え込んでいる。希林さ

んはそれを「いいことではない」と思っていたのだろう。

 なので、その真っ当な事を少しひねって表現する事で、そ

れが聴く人の心に引っ掛かるようにする。

 自分たちの考えている常識を考え直してみるキッカケを与

えてあげる。

 親切な人だったと思いますね。(考え過ぎかもしれないけ

どね)


 「生きてると、死ぬじゃない? なんで死ぬ方は異常な

の?」

 そんな感じのスタンスで、いろいろなことを発言されてい

た。真っ当ですね。当たり前のことだもの。


 今朝から、希林さんを「自然体」という言葉で評すのを何

度も聴いた。ということは、他の人はみんな「不自然体」だ

ということですね。

 希林さんを「自然体」と評する事に、多くの人が頷くので

あれば、その多くの人たちは、自分や自分の周りの人たちを

「不自然体」だと感じているわけです。

 それなら、ちょっと考えてみた方が良いと思うんだけど

ね。せっかく、希林さんが親切に足元をすくってくれている

のに。


 「変わった事を言うな。考えさせられるな・・」

 そう思う、けど、それで終わりでしょ?

 本当に考えてみたりはしない。そして「不自然体」のまん

ま・・・。

 当の希林さんは、「親切はするけれど、それでその後どう

するかはそれぞれの人の問題で、わたしは知らないわ」とい

うスタンスだったんでしょう。(考え過ぎかもしれないけれ

ど)


 希林さんは「自分に正直」という見方をされているけれ

ど、自分の考えを担保する為に感覚を使うんじゃなくて、

自分の感覚を整理して、感じたことを自分の生き方の中に落

ち着かせて行く為に、ものを考える人だったんだろうなと思

います。


 〈感覚〉は自分本来のもので、〈考え〉は世の中から仕込

まれたものだから、感覚優先だと「自分に正直」ということ

になりますね。けれど、「自分に正直」な人が、みんな希林

さんの様な人ではない。「自分に正直」が “自分の考えに正

直” だと、ただのエゴイストになってしまう・・。「自分に

正直」という言葉も、そう気軽には使えないものです。


 ああいう人は、なかなかいないわけですが、希林さんと同

じ部類の人(「同じ部類」なんて、ちょっと失礼な表現です

が、他の言葉が浮かんでこない・・)に、ミヤコ蝶々さんが

いました。あと、残っているのは藤山直美さんぐらいかな。

 三人とも、凄い芸達者で、ひねった面白い話をしてくれ

る。

 大好きですけどね。

 ミヤコ蝶々さんが亡くなった時も「淋しくなったな」と思

ったけれど、今回も世の中が少し淋しくなったね・・。



 真っ当な事を、ストレートに言うと嫌われる。

 嫌われてもいいんだけど、嫌われると話を聞いてもらえな

いので “ひねる” 。その為には、ジョークのセンスが要る。

 ジョークというのは、単に笑わせることが目的じゃなく

て、本当の目的は、相手のものの見方を変えさせることにあ

る。ジョークの陰には優しさが隠れているのだけれど・・。

 「みんな一緒」の日本人には、ジョークは根付かないんだ

ろうなぁ。



 希林さん、面白かったです。ありがとう。



0 件のコメント:

コメントを投稿