2017年5月14日日曜日

時代に殉ずる

 《 すべての生命は風土に殉じ、

       すべての存在は時代に殉じる 》


 日本は温暖で多湿。植物の種類も多いので、高山か、よほ

どの崩れ易い急斜面でなければ、裸地になってもすぐに植物

が生えてくる。街中でも、空き地を7~8年放っておけば、

ちょっとした森になってしまう。

 そうなるのは、日本の四季に適応出来るたくさんの植物種

が存在するからなんですが、これらの植物たちも、もし日本

の気候が極端な温暖化や寒冷化をしたら消えてしまいます。

 つまり、植物はその土地の「風土」が合っていなければ、

生きられないんですね。

 この場合の「風土」とは、気温・水分の多寡・土壌の質と

そこに含まれる成分・光量・大気の成分・外敵の有無です

が、その内のどれか一つでも違えば、適応出来る植物の種類

は変わってしまいます。(ある程度の幅はありますが)

 他の生物の場合でも、「風土」の中に、餌になる物の有無

が加わるというだけで、その生物に合った「風土」でなけれ

ば、生きられません。

 人間は「風土」を自らに合うように、かなり大きく改変し

たり、直接の影響を回避したり出来るので、本来は生きられ

ない所でも生きられたりします。しかし、それにも限界はあ

って、エベレストの山頂や海の中、宇宙ステーションなどに

は、少しの間滞在することが出来るというだけです。

 これらの場所に滞在する為には、「人の生きられる風土」

を持ち込む必要があります。宇宙ステーションや潜水艦の中

は、「人の生きられる風土」の簡易版です。

 さらに、“文化”も「風土」に殉じます。“文化”というの

は、人間という生物の行動様式の類型ですからね。

 例えば、“日本文化”は「日本の風土」がなければ、残りま

せん。インドネシアに“日本文化”を持ち込んだとしても、

「インドネシアの風土」に影響されて、違ったものになって

行くでしょう。また、サハラ砂漠で“日本文化”は可能でしょ

うか? 水も木も手に入れ難い所で、“日本文化”は成立しま

せん。“文化”は、「風土」を骨格にして形造られます。

 そして、そこに住む人々は“文化”の影響の中で暮らさざる

を得ません。継続的にも、刹那的にも「風土」に既定された

中で、感じ、考え、行動しているのです。



 ここまでは、常識的な話です。では、「時代」に殉ずると

はどういうことでしょう?

 *江戸時代に、私が生まれてもブログをやることは出来ま

  せん。当然ですね。
 
 *昭和初期の平均寿命は、50歳ぐらいでしょう。

 *景気がよければ、景気が良いなりの暮らしになり、不景

  気だと、不景気なりの暮らしになります。

 *40億年前に、生命が生まれる事はできません。

 *氷河期の北海道に雨が降ることはできません。(と思い

  ます)

 *50億年後に太陽系は存在できません。

 *今と全く同じ銀河は、明日は存在しません。
 

 今、この時の状態は、今しかありません。

 宇宙のすべての存在は、変化することを免れません。

 その存在の在り方は、その時々の、その瞬間の、相互の在

り方に既定されます。これを、「同時相関相補性」と言いま

す。

 すべての存在は、時代(厳密には瞬間ごとですが)によっ

て、動くことも、動かないことも制限を受けます。

 何物も、それだけが独立して動くことは出来ません。

 そもそも、「動く」という事自体が、他との相対的な観念

です。冥王星と海王星の間あたりに、一人で放り出された

ら、時速5万キロで動いていても、自分は止まっている様に

思うでしょう。これは逆に、他が動けば、自分が動いたのと

同じことです。自分だけが止まっている事も出来ません。

 「諸行無常」ですね。


 何の為に、こんなことを言っているかというと、わたした

ちは、「自分たちの考えで、時代を変えられる」と思ってい

るふしがあります。(ずいぶん遠慮した言い方だ)

 自分たちで、時代を変えることは出来ません。

 時代を変えようとすることも、時代に促された行為だから

です。わたしたちが時代を超えることは、出来ません。
  
 「時代」とは、その時々の変化を支配する大きな流れだか

らです。


 孫悟空が、お釈迦様の掌の上から出られなかったように、

全ての存在は「時代」の流れの中で、「時代」によって動か

されて行くのです。 


 真夏の東京のオフィスの一室でエアコンを使わずには居ら

れません。(かなり、やせ我慢をすれば出来るかも) で

も、これが50年前だったら、扇風機だけでも、あるいは扇

風機無しでも居られます。実際にそうでしたからね。 

 わたしたちは、「風土」と「時代」に殉じているのです。




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