2021年10月7日木曜日

亡霊たちの世界



 亡霊、あるいは幽霊というものは、死んだのに個人の魂が

成仏できずに現世に留まっている状態ということになってま

す。「なってます」と言うのは、私は自分の世界観にはそう

いうものを採用していないので、他人事だからです。


 亡霊、幽霊、それから霊能力といったようなものの存在

を、信じる人と信じない人がいますが、私の場合は信じない

というより「関係が無い」という感じです。ですから他人事

ということになるのですが、その他人事をなぜここに引っ張

り出して来たかというと、世間一般で使われる意味とは違う

形で「この世界には亡霊がいっぱいいるな」と思うので、そ

れを書こうと思ったからです。


 私の考える亡霊とは何か?


 以前、「この国には日本兵の亡霊がまだウロウロしてる」

というようなことを書いたことがある(ような気がする)。

 戦後、この国で学校や職場で子供や部下の教育をする立場

に立った男たちのほとんどは、軍隊経験者だったと考えられ

ます。彼らは無意識に軍隊式の教育を学校や職場に、さらに

は家庭に持ち込んでしまったはずなのです。そしてその軍隊

式の教育はかなり薄まったとはいえ、世代ごとに引き継がれ

て、現代でも人に苦しみをもたらしている。なぜなら、それ

は「教育」の体裁をした「支配」だから。

 そのような「日本兵の意識が現代人の中に受け継がれ、問

題を起こしている」という状況は、私なりに言えば「日本兵

の亡霊がウロウロして祟ってる」ということになるのです。

 そして、ことは「日本兵の亡霊」にとどまりません。


 たとえば、過去に虐待やイジメに遭い、それがトラウマと

なって現在も苦しんでいるような人は、虐待やイジメをした

人間の「悪意」に憑依されているようなものです。つまり

「悪霊」に憑りつかれているのです。また、完璧主義の親に

育てられたりすると、ちょっとした失敗をする事さえ怖くな

り、いつも他人の目を気にして緊張するようになったりする

ことがあります。そういうのは「地縛霊」ならぬ「事縛霊」

の憑依です。過去の出来事に縛られて心が安らげないので

す。


 実のところ、わたしたちは誰でも、程度の差こそあれ、い

くつもの「事縛霊」に憑りつかれ、振り回され、自由に動け

なくなり、苦しんでいるのです。

 病気やケガは身体を苦しめますが、わたしたちの心を苦し

めるのは、すべて「事縛霊」のしわざです。意識に憑りつい

た、実体の無い “出来事の亡霊” に苦しめられるのです。


 職場で性格の悪い上司に不愉快な扱いを受け、家に帰って

からもそのことで気分が沈んでしまうことなどよくあります

が、家にはもう性格の悪い上司はいませんし、不愉快な扱い

ももう済んでしまっています。なのに気分が沈み、心が安ら

がないのは、済んでしまった出来事に憑依されてしまってい

るのです。

 そして、そのような「事縛霊」にたくさん憑依されたり、

とても強力な「事縛霊」に憑りつかれると、自分を見失い、

今度は他の誰かに「事縛霊」を憑依させる側になる。

 そのようにして、この世界は、出来事に憑りつかれて苦し

む人間たちがひしめき合うことになるのです。


 さんざん「霊」という言葉を使いましたが、その意味をハ

ッキリさせておいたほうがいいでしょう。

 私がここで言っている「霊」というのは、 「想念」のこと

す。それは、まったくオカルト的なことではありません。

「事縛霊」と私が書いたのは「事に縛られた想念」というこ

とです。

 わたしたちのアタマの、悪いクセのおかげで、刺激の強い

事が、不安・怖れ・怒りといった想念となって意識に憑り

きます。その「強い想念」がわたしたちを苦しめるので

す。
 

 この「霊(強い想念)」を祓わなければ、わたしたちは安

らぐことはできません。いったいどうすればいいのか?
 

 それを生みだし、エネルギーを与え続けているのは、自分

自身のアタマだとまず気付くことです。それには実体は無い

し、何のエネルギーも持っていません。自分のアタマの中以

外、どこにそれが存在しますか?それは、自分の出来の悪い

アタマが意識に投影している幻影でしかありません。それは

まぼろしです。過去の出来事の残渣です。本当は無力な、記

憶の断片でしかありません。たとえ、それが起きたのが10

秒前でも、今、ここには存在していません。もう済んでいま

す。自分自身が、それにエネルギーを注ぎ続けない限り

は・・・。

 
 わたしたちのアタマは悪い。ほんとうに悪いのです。まる

で自分を苦しめるのが役目のようです。アタマは、わたした

ちの意識の中に不要な想念を作り出すことを得意としていま

す。そして、意識が想念から想念へとうろつき続けること

で、命のエネルギーを奪い取ってしまいます。そして本来の

自分に向けられるはずだった命のエネルギーを想念に奪い取

られ、亡くしてしまったら、人は想念だけで実体の無い存

在、「亡霊」になります。


 何かに憑りつかれて彷徨い、何かに縛られてかたくなにな

り、命というおおらかさを見失って苦しみ続ける・・・。

 けっして他人事ではないのです。

 いま、こうしてパソコンのキーを叩いてる人間も、この画

面を見ているあなたもね。






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