2019年5月12日日曜日

オオキンケイギクに代わって言わせてもらう












  


  






 

 初夏の温かい風の中でオオキンケイギクの花が揺れてい

る。

 うちのそばの空き地では毎年この花が咲き乱れ、通りがか

った人が写真を撮る姿もよく見かける。しかし、この花は十

数年程前に「特定外来種」に指定されて、販売も栽培も禁じ

られている。それまでは園芸店で売られていたけれど(「ウ

サギギク」なんて名前でも流通していたなぁ)。


 環境省曰く、「オオキンケイギクは、その繁殖力の強さか

ら、在来の植物を駆逐して生態系を攪乱する」。


 「フン!」と私は笑ってしまう。「在来の植物を駆逐して

生態系を攪乱・・・」しているのは人間じゃないか。

 まず人間が攪乱し、その状態を維持している土地で、オオ

キンケイギクは繁殖する。もしも人間がその土地の管理を辞

め、放ったらかしにすると、たぶん五~六年でススキやヨモ

ギやセイタカアワダチソウに取って代わられ、さらにそこに

アカメガシワやキリやエノキやシンジュなどの落葉樹が入り

込み、やがてそれらの木の陰になったススキなども消えて行

く。

 これらの中で、シンジュは外来種だけれど、数十年たてば

在来の照葉樹に駆逐されてしまう事だろう。日本の植生は強

靭なのである。


 オオキンケイギクは、「日本の生態系を攪乱する植物」で

はなくて、「“人間が日本の生態系を攪乱したこと” を表現

している植物」なのだ。自分たちの罪を、物言えぬ植物にな

すりつけてはいけない。


 植物の場合の「特定外来種」指定には、このような「人間

による生態系の攪乱」を無視したものが多い。大抵のもの

は、放っておいたら植生の遷移過程で消えてゆく。仮に残っ

たとしても、それは本当に問題なのだろうか?

 動物種の場合は、アライグマやブラックバスなど、人が攪

乱していない自然環境の中で在来種と競合して駆逐してしま

う可能性は強いだろう。でも、それを「問題」とするかどう

かは、個人の好みで恣意的なものだ。言わせてもらえば、そ

のようなことを言っている現代の私たち日本人は、外から

って来て縄文人を駆逐したり混血した、弥生人の末裔という

見方もあるのだから、身のことを棚に上げてよく言うよと

思う。


 日本の野山でタヌキよりアライグマが増えたとしても、

「部長の田中さんが移動になって、中村さんが代わりにやっ

て来た」というようなものです。

 「わたしは田中さんの方が良かった」なんていうのは、新

たにやって来た中村さんに失礼でしょう。中村さんは自分な

りに一所懸命やっている。なぜ中村さんじゃいけないのか?

たんに、なじみが無いというだけでしょう。


 人が手を加えた土地、特に都市部で見かける植物の九割は

外来種だと思われる。

 セイタカアワダチソウやヒガンバナなどはすっかり日本に

とけこんで、もはや日本の風景になっている。そういう現実

には触れないで、「外来種が在来種を・・・」などと言って

いるのを聞くと、「今さら何を言っているんだか・・」と思

う。

 かれら動植物は、連れて来られたその場所で、自身を生き

ているだけだ。恐ろしい伝染病でも引き起こすわけでもない

のに、それを「もともと居たんじゃないから」と排除しょう

とするのは、民族差別と同じ意識が隠れている気がするのだ

けれど、考え過ぎだろうか?


 私だってなじみの顔が見られなくなるのは淋しい。

 河原をオオキンケイギクがうめ尽くすよりは、カワラナデ

シコやカワラハハコなども咲いている方がいい。けれど、オ

オキンケイギクを排除したところで、日本人が本気でそれら

を戻す努力をしない限り、もうそれらの花は戻って来ない。

 見たところ、環境省にそのような努力をする気は見られな

いので、たんにオオキンケイギクを排除しょうとするのは、

ただの “よそ者イジメ” でしょう。


 人が消えれば、オオキンケイギクも消える。所詮は人の都

合の範囲内のこと。それなら、咲かせてあげればいいじゃな

いか。キレイだから、在来種のクズやヨモギが蔓延るよりも

楽しめるしね(クズさん、ヨモギさん、ゴメンナサイ)。


 外来種を悪者扱いして排除することを「善」としてもいい

けれど、少なくともその前に、日本人として、自分たちが駆

逐してしまった在来種に頭を下げるべきじゃないだろうか?

本当に悪いのはオオキンケイギクではないのだから。 

 都合のいいことを言って善人ぶるのはヤだね。


 (ちなみに、オオキンケイギクはどちらかといえば駆除

  しやすい方なので、問題にしておいて成果を挙げるに

  はもってこいですね。一方で、セイタカアワダチソウ

  は昔からオオキンケイギクより大繁殖しているのに

  「特定外来種」には指定されていない。駆除が難しい

  ので諦めてるんでしょう。駆除できないものを問題に

  しても、成果は上げられないしね。・・・イジワルを

  言い過ぎだろうか?)







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