2023年6月17日土曜日

無完成



 「次回はスズメバチのお話しをしよう」などと前回の最後

に書いてしまったので、今回は行きがかり上、スズメバチの

話を始めよう。さて、どんな話になるのやら・・・。



左の写真が今回取ったスズメバ

チの巣。出て来たハチがオオス

ズメバチに見えたので、オオス

ズメバチの巣だと思ったけれ

ど、考えてみればオオスズメバ

チは地中に巣を作る。あらため

て調べると、形状と営巣場所か

ら、これはコガタスズメバチの

ものらしい。長さは15cm程度。

細い管状のところが入口で、

下向きになっている。雨やゴミが入

らないためにだろう。



こちらは中身を取り出したも

の。ハニカム構造の育房ができ

ていて、数個の卵が産みつけて

あった。「さあこれから」とい

う時に申し訳なかったね。







 スズメバチたちは、こういう見事な造形物を本能的に作り

上げる。このような自然の造形物を見るたびに「不思議だな

ぁ」と思い、畏敬の念さえ覚える。さらに、そのからだ自体

がまたよく出来てる。出来過ぎている。

 以前、家のそばでオオスズメバチの死骸を見つけたので、

持ち帰って虫眼鏡でしげしげと眺めたことがあったけど、一

言で言って「怪物」。強靭な外骨格、ニッパーのようなア

ゴ、デカい複眼に加えて、額のところに明るさを感知するた

めの三つの単眼があって、その面構えを引き立てている。そ

して長い毒針・・・、カッコイイ。見ていると、生物進化の

一つの完成形のように思えた。(オオスズメバチは世界最大

級で最強のハチと言われているけれど、もし体長が30cmも

あったとしたら、人間もエサにされてしまうだろう)


 とはいえ、実のところ生物の進化には完成形は無い。地球

環境は変化し続けるので、それに合わせて生物も変化し続け

る。生物自身が環境を変えてしまい、それによって自らも姿

や生態を変えることもある。生物は常に進化の途上にある。

わたしたち人間も例外じゃない。

 滅亡せずに生き延びられれば、いつの日か、わたしたち人

間も次の形態や生態へと変わる時が来る。その時には現生人

類は淘汰されて滅びるか、生息域を大きく狭めることだろ

う。本当の意味で “新人類” の時代が来る。その新人類が、現

代人の望むようなストーリーを具現化したものになるか? 私

は「違うだろうな」と思う。

 進化するのなら、人間はこの「悪さ」をするアタマを切り

捨てるだろう。こんなものを載っけたままで苦しみ続けるの

なら、それは進化と呼べないだろうと思うから。そして、新

たに身に付けた本能に従って、環境に適応してゆく存在にな

るだろう。スズメバチがそうしているように。

 それができなければ、人間はこのまま消え去るだけだろ

う。アタマが生み出し、動かす世界を、今以上拡張すること

はできないだろうと思うから。


 これまで何度も書いたけど、わたしたちの文化はもう行き

詰まっているというのが、私の見立てです。しかも、本来あ

るべき生き方とはズレた、無用な方向へ発展した末の行き詰

まりだから、いずれ破綻する。そして大きく縮小した文化の

中で、本来あるべき生き方への道を模索することになるだろ

う。ただ、それは「運が良ければ」ということだけど・・。


 いずれにせよ、アタマに惑わされ、右往左往して自ら苦し

んでいる現生人類はいずれはいなくなる。

 この世界に存在できている内に、いまのわたしたちなりの

「完成形」を経験しておきたいものだ。からだは変えられな

いけどね。






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