2023年6月25日日曜日

“Cool Japan” の本質



 この頃、私の生活圏でも、日本で暮らしているらしい外国

人を見かけることがかなり増えたと思う。自分の家の近所で

は白人さんをよく見かけるようにもなった。やはり日本在住

者は増えているようだね。


 欧米が移民問題でなかなか頭を悩ませているせいで、日本

の中で「日本に外国人を入れるな!」みたいな発言もよく目

にする。「移民が増えると日本の社会や文化が壊され、日本

が日本でなくなる」という発想らしい。

 外国は個人主義的な社会が多いので、そういうところの人

間が増えると、好き勝手をやりだすのでヤバイという感じな

んだろう。けれど、そうなるのだろうか? 「人口の2割が一

気に外国人になる」ような状態なら、確かに社会は大きく変

わってしまうだろうけど、少しずつ増えるのなら、そんなに

変わらないのではという気もする。そう思う理由は日本の風

土による。


 随分前に《 すべての生き物は風土に殉じ、すべての存在は

時代に殉ずる 》という言葉を載せたけれど、日本人が日本人

らしいのは、この国の風土が大きく影響しているだろう。

 地震・津波・噴火・台風・大雨・大雪・・・、国土面積に

比べて災害の発生件数は世界有数。その上、高温多湿で植物

の種類が多いので、都市部でも空き地を7~10年も放置し

ておけば、ちょっとした森になってしまう程、日本の自然は

強靭だ。そのような風土に暮らそうとすれば、コミュニティ

が協力しなければ、暮らしは立ち行かない。自分勝手で人任

せでは暮らせない。そのような人間は社会からはじき出され

てしまうだろう。日本に暮らして、日本の自然と日本人に付

き合えば、日本人になってしまう能性が高い。もちろんそ

うならない人間もいるだろう。日本人らしくない日本人もい

るんだからね。


 で、その「日本人らしさ」について、2~3年前から思っ

ていることがある。


 10年前ぐらいからだろうか、外国人の日本・日本人評を

よく耳にするようになった。

 「日本人は特殊」「街にゴミが落ちていない」「電車の中

や街が静か」「無表情で冷たくみえるけれど、助けを求めれ

ば親切に答えてくれる」「落とし物が戻って来る」「行列を

乱さない」「さまざまな場面で譲り合う」「本音を言わな

い」「しょっちゅうお辞儀をするけど、握手やハグはあまり

しない」「エレベーターで黙ってる」「恋人同士でも人前で

イチャイチャしない」などなど。(どの程度、リップサービ

スや誇張が含まれているのか知らんけど)

 そういった「日本人らしさ」、欧米人などとの違いが生ま

れる理由に気がついたのです。それは「個人」と「社会」の

在り方にある。それはこんな感じだと、私は見ている。



                                         欧米のような個人主義の社会では、社会の中に個人がいる



 日本では社会の外に個人がいて、少しずつ社会に参加して

いる


 欧米では「社会」はその中にいる「個人」が利用するもの

で、公共の場・物は利用するものであり、その管理は「社

会」が担うという意識なのだろう。「社会」は「個人」の為

に有る。「社会の中で個人が何をしようが自由」。だから

「個人主義」。

 一方、日本では生きる為に「個人」が「社会」を維持しな

ければならないので、「個人」が協力して公共の場・物を管

理し、それぞれが必要な時に利用できるように、なるべく空

けておかなければならないという意識なのだろうと思う。日

本は「社会主義」的。


 そのように考えると、日本社会・日本人の特性が良く分か

る。

 「本音を言わない」「自己主張しない」。人間関係も一種

の公共空間なので、なるべく空けておくのです。

 「街にゴミが落ちていない」「電車や街が静か」「キチン

と並ぶ・譲り合う」。なるべく空けておくのです。

 「人前でイチャイチャしない」「握手やハグをあまりしな

い」。公共の場に「個人」持ち込まず、なるべく空けておく

のです。

 「落とし物が戻ってくる」。落とし物はゴミと一緒であ

り、かつ公共の物。取り除き、公共に処分を任せて、公共の

場を空けるようにする。


 日本人にとって、公共の場、社会は、使う時の為に空けて

おかなければならないもの、できるだけ整えておくものなの

です。多分、日本人は無意識にそう思っている。それが「日

本人らしさ」を生んでいる。その意識を生んだのは、この国

の風土でしょう。協力しなければ上手く生きられないので、

「個人」の都合は二の次になる。
 

 「“個人” は、自分の家や、余裕のある時にやってくれ」

 それが、日本人の隠されたコンセンサスなのでしょう。


 さらに「日本人らしさ」に大きな影響を与えているのは、

仏教でしょう。なにせ「空けておく」のですから、「空」で

す。

 この強靭な自然と災害に折り合いをつけながら生きて行く

ためには、己を空しくして協調しなければならない。その現

実は、仏教と親和性が高いのでしょう。だから仏教は定着

し、独自の発展をした。


 もちろん「日本人らしさ」にも弊害は有る。良いことは、

状況が違えば悪いことになる。それは必然ですから。ただ、

「空けておく」という “在り方” は、人間の根本的な態度とし

てはとても優れていると思う。

 そして、自分の心の中のエゴをなるべく下がらせて、心を

「空けておく」なら、それはやはり清々しさをもたらすはず

です。

 “Cool Japan!”  ではなく、”空、ジャパン” なのかも

しれない。(ああ、ダサい・・・。まぁ、いいか・・・)



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