2023年7月29日土曜日

自分に素直に ?



 今日、久しぶりに今井美樹を聴いていて『PIECE OF MY 

WISH』というよく知られたヒット曲を聴いていたとき、“ど

うしてもっと自分に素直に生きれないの?” という、誰でも

聞き覚えのあるサビの部分で「う~ん・・、そうか・・・」

と思った。何が「そうか・・・」というと、「誰も彼も、い

ついかなる時でも素直に生きてるよなぁ・・」と。

 “素直に生きれないの?” なんて、満足を知らない人間のた

わごとですよ。

 この前の「自分らしさ」の話と同じことだけど、実際にや

ること、やってしまうことがその人の「素直」ですよ。

(『PIECE OF MY WISH』は良い曲ですけどね)


 「本当は今の彼と別れたいけど、いろいろなことを考える

と “付き合っている方が良いのかな” と思って付き合い続けて

いる・・・」というような話はよくあって、この場合「本当

は別れたい」が素直な気持ちだということになるんでしょう

が、それはただ、覚悟を決めない女の愚痴であって、「付き

合い続けてる」という事実が、その女の「素直」です。現状

に満足する謙虚さがないのと、現状を打ち破る勇気がないこ

とを認めたくないので、グチグチと自分を繕ってるだけのこ

とです。自分で気に入ろうが気に入るまいが、いまそのよう

にしているのが、自分の「素直」です。

 自分を飾ろうとするから、「素直」という〈本当の自分〉

が存在するかのように思い込もうとしているだけで、実際に

やっていることが「素直な自分」そのものです。


 「素直な自分」なんてことを考える人は(かなりの確率で

ほとんどの人がそんなことを考えるだろうけど)、いまの自

分が気に入らないのでしょう? だから「これは本当の自分じ

ゃない」と考えるのでしょう? そんなことを思ったところ

で、実際の自分を消すことはできない。自分をごまかしても

そんなの表面上のことで、深層心理では自分に勇気や覚悟や

謙虚さが無いことに気付いている。その深層心理での自己認

識は、あとで必ず自分に祟るのですよ。自分が苦しくなった

り、誰かに八つ当たりして、それで次から次へと自分で困り

事を作り出してしまったり・・・。


 「本当の自分」とか「素直な自分」とかいうようなチープ

な夢は、自分をしあわせにしないですよ。「いまこうしてい

る自分」が「素直な自分」ですよ。「本当の自分」ですよ。

だって、実際にそう在るんだから、それを「これは本当の自

分じゃない」とか「素直な自分じゃない」なんていうのは妄

想以外の何ものでもないでしょう? そういう人には「つまら

ん夢を見なさんな」と言ってあげたい(まぁ、中学生までは

夢見ても仕方ないとは思うから、それでいいと思うけど

ね)。


 自分を飾ったって何にもならないんですよ。せいぜいつま

んない自己満足が得られるだけで、それよりも、不毛な自己

否定に鬱々とするのが関の山です。

 「なにものかでなくてはならない」とか「誇らしい本来の

自分というものが有るはずだ」というような、社会に刷り込

まれたお話しに我を忘れてるだけですよ。


 「いま、実際にそのようである自分」の何がいけないの

か? なぜ、それを認められないのか? その元を辿れば、社会

の刷り込みでそう思わされているということは誰にでも分か

るはずです。

 むしろ、「自分を飾ろう」という意識が無くなって、「な

んでもない自分」や「なさけない自分」や「出来の悪い自

分」を受け入れた方が、自分の中に有る〈命のエネルギー〉

とでもいうものが素直に流れ出してきて、自分をしあわせな

状態へ動かしてくれるように思いますね(責任は持てません

が)。そうした時に現れて来る「実際の自分」こそ「素直な

自分」でしょう。


 それは社会的評価とは何も関係ないかもしれないし、社会

からバカにされるような「自分」かもしれません(社会から

「凄い!」と言われることもあるでしょうが)。けれど、自

分を評価せずに「そのようである自分」を受け入れてあげら

れることが、自分に対する最善のことでしょう。

 とはいえ、その自分が「犯罪行為をしようとしている自

分」であったり、「DV 男との関係を断てないでいるような

状況」とかなら、「これが素直な自分 😊」なんて喜んでいる

わけにもいかない。そういうことなら変えることを考えなけ

ればいけませんが、そういうことになるとしたら、それはや

はり無意識に自分を飾っている可能性が高いでしょう。


 そもそも、自分が自分を否定するなんておかしいと思いま

せんか?

 社会から刷り込まれた “約束事の価値観” で自分を評価する

から、自分を否定してしまうのですよ。そして、そのせいで

生まれる自己否定感が、生きている上で実際に問題を起こす

ことに繋がって、本当に自己否定しなければ済まなくなるの

だと思います。


 人はみんな出来損ないです。それを否定して飾ろうとする

から、かえっておかしなことになる。

 自分で自分を気に入ろうと気に入らなかろうと、みんな素

直に生きてますよ。


 「ああ、さしあたりこれがいまの自分なんだな」と素直に

現実を受け入れてやれば、社会の刷り込んだ “約束事の価値

観” から少し自由になって、アタマの思いもしない自分とい

うものが現われて来る・・・。それが「素の自分」なのでし

ょう。


 「自分に素直に生きる」のではなくて、「素直に自分を生

きる」。

 それが、「素直」(というもの)がわたしたちに望んでい

ることでしょう。



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