2019年7月3日水曜日

イデオネラ・サカイエンシス登場!



 つい最近知ったのだが、2005年に大阪の堺にあるリサ

イクル工場から、PET 樹脂を食べる細菌が見つかっていた

そうだ。それがイデオネラ・サカイエンシス。


 いずれはそういう細菌が現れるだろうと思っていたし、そ

んなに遠い未来の事でもないだろうとも思っていた。なぜな

ら、これまでにタンカーからの重油流出事故の現場などで、

重油を分解する細菌は何種類も見つかっていたそうだし、細

菌の変異速度はとても早いので、プラスティックを食べる細

菌だって、すぐに出てくるだろうと思われたから。


 先日行われた G20 でも、海洋プラスティックゴミの問題

が議題になったりしたこともあって、十年以上の歳月の後

に、イデオネラ・サカイエンシスが注目を浴びることになっ

た。「プラスティックゴミ問題の解決に役立つのでは」と。


 この菌の研究者は、PET 樹脂のリサイクルに使えるので

はと考えているようです。

 PET を、サカイエンシスにエチレングリコールとテレフ

タル酸にまで分解させておいて、それを化学原料に使えば、

効率よくリサイクルができるのではないか、ということだそ

うだ。研究者は「ゴミ処理」なんてことは言っていない。


 賢明ですね。地に足の付いた、ちゃんとした学者さんたち

だなぁと思います。なぜなら、もしも、このサカイエンシス

の分解能と増殖力を高めることができて、それをゴミ処理に

使ったらどうなるか? PET 樹脂が分解されると、燃やすの

と同じように水と炭酸ガスになるわけですが、私の単純計算

では100トンの PET 樹脂を分解すると、218トンの 

CO2 が生成される(*)。CO2 は出さないようにしたいん

でしたよね? わたしたちは。

 ダメでしょ。


 ここからはヨタ話ですが、そのパワーアップしたサカイエ

ンシスが環境中に放たれたらどうなるか?それも、大気中で

も海水中でも同じように生きられるとしたら?

 これまで人類が作って来た PET 樹脂(ボトル・繊維・フ

ィルム・すでにゴミとなっているもの・など)のすべてが分

解されて、数十億トンの CO2 が  もっとかもしれな

  環境中に解き放たれることになる。温暖化促進に貢献

します。

 それならば、PET は燃やして、発電にでも使う方が賢い

ですよね。どうせ CO2 になるんだったらね。


 このサカイエンシスだけではなく、まだ見つかっていない

だけで、もうすでにプラスティックを分解する細菌はいろい

ろ存在していると思いますよ。PET 以外にポリスチレンや

ポリプロピレンや塩化ビニルや合成ゴムなどを分解する菌

が、それぞれにいるだろうと思いますね。(で、ここまでは

ヨタ話ですが、ここからは SF です)

 それらの菌が、キノコが木や枯葉を分解するようにプラス

ティックを分解し始めたら?

 その恐ろしさが分かります?

 こんなストーリーが考えられます。



 ある日、JAF の隊員が現場へ向かう車の中で話していた。

 「また、パンクか。この頃パンクが多いなぁ。そう思うだ

ろ? それも、バーストばっかりだ」

 「そうですねぇ。去年まではこんなに多くはなかったです

ねぇ。ホントに急に増えた感じですね。それも、春ごろか

ら」

 「この前、事務所でちょっと調べてみたら、東日本でパン

クが急増しているみたいだなぁ。何か理由がありそうだけ

ど・・・」


 同じころ、千葉県で大規模停電が発生して、東電のオペレ

ーションルームは大変な騒ぎになっていた。

 「原因は?」

 「複数のエリアで、配電線に損傷があったようですが、

まだ損傷の理由が分かっていません。いま、現地に職員が向

かっています」


 この時、東電職員は知る由もなかったが、東電管内の配電

線の被覆は怖ろしいほど劣化し、カラスが突っつくだけでポ

ロポロと砕けるような状態となっていたのだった。それも、

総延長800kmに渡って・・・。そして、その三日後、首都

圏全域が停電し、パニックが起こることや、半年後、世界の

三分の二の地域で電気が使えなくなり、現代文明が一気に崩

壊に向かうことなど、誰も想像すら出来ていなかった・・。



 とまぁ、こんなことをもう二十年ほど前から考えていて、

「誰かこのネタで映画を一本作ってくれないかなぁ」とか思

っていた。

 「脱プラスティック」なんて言っているけど、現在のよう

にプラスティックが安価に大量に使えなければ、現代文明は

維持できませんよ。みんながかなりの不便を受け入れれば、

半分ぐらいには出来るかもしれないけれど、まぁ、そんなこ

とほとんどの人は受け入れないだろうなぁ。


 「電気が使えなくなり、現代文明が一気に崩壊に向か

う・・・」

 プラスティックはさまざまな物に使われているわけです

が、現代文明にもっとも貢献しているプラスティックの特性

は、非常に優れた絶縁体であることです。

 さまざまな形・固さの素材を容易に作ることができるの

で、電線の被覆・電子部品の基盤・電気製品のキャビネット

等には無くてはならない。他の素材では代わりが効きませ

ん。プラスティックがあるからこそ、わたしたちは電気が使

えるのです。そのプラスティックが、細菌によって短期間で

劣化し始めたら・・・。さしあたり、19世紀へ逆戻りです

ね。


 もう一つ、プラスティックが大きな役割を担っているの

が、自動車のタイヤでしょうね。合成ゴムの耐久性が著しく

落ちたら、自動車に大きく依存している現代社会は終わりで

す。電気自動車も走れません。馬と荷車の出番です。


 恐ろしいでしょ?

 そんな細菌が本当に現れるのは一万年後か百万年後か知り

ませんが、いずれ必ず現れるはずです。もしかしたら、十年

後かも知れないし・・・。


 太古の昔、地球上に木が生えだした頃には木を分解できる

生物がいなかった。植物が創り出した、 “木” という新しい

物質を食べてエネルギーを作り出せる生き物が現れるには、

相当の年月が必要だったでしょう。だから、“木” は分解さ

れずに大量に残り続けて、膨大な量の石炭に姿を変えた。け

れども、プラスティックはそう永くは残れないでしょう。も

うすでにプラスティックを分解する菌がいるわけだし、プラ

スティックが生物界の食物連鎖に組み込まれるのに、何千万

年もかかるとは思えないね。
 

 「脱プラスティック」なんて言って、プラスティックを悪

者扱いするのもいいけれど、プラスティックが無ければ現代

文明は成り立たないんだから、少し感謝と敬意と畏怖を持つ

べきなんじゃなかろうか。「“プラスティックさん” ありが

とう。」ってね。


 悪いのはプラスティックじゃなくて、わたしたちのアタマ

なんだから。


 (*計算は間違ってるかも知れませんよ) 



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