2023年9月17日日曜日

1+1=1



 ロウでできたキューブを100個用意する。それを縦横

10個ずつ並べてまとめると、そこにまとまった100個の

キューブがある。

 この100個を火であぶるなどして表面を溶かして繋がっ

た状態にすると、実質的には変わっていないが、大きな一つ

の物に見える。

 状態は少し違うけれど実質的には同じ物がそこにはある。

けれど「分かれている」と意識すれば100個だが、「分か

れていない」と意識すれば1個だと思う。

 なんの話かと言えば、「“1” とは何か?」ということ。


 何度か書いて来たことだけど、わたしたちは物事をいった

ん分けなければ考えることができない。

 考えるという行為は、ある物事とある物事の関係を理解し

ようとする行為なので、分かれていない物事については考え

られない。なので、人間がものを考えるのは、分かれている

物事の関係(結びつき方)を知って、世界をちゃんと認識し

ようという営みだといえる。

 と、考えるのが常識的なアプローチだろうけれど、「い

や、ちょっと待て」と私は思う。


 先に「わたしたちは物事をいったん分けなければ考えるこ

とができない」と書いたけれど、どうやらわたしたちは、自

分で物事を分けておいて、それからその物事の結びつき方を

考えるという、ムダかもしれないことをしているように思え

る。

 「世界の物事が分かれているから考える」のではなくて、

「考えるという行為をしたいために、世界の物事を分ける」

というのが実情ではないのか? わたしたちが「考える」の

は、考えることでより良く生きる為というような事ではなく

て、「考える」という行為が、人類共通の先天的な病だから

だろう。

 わたしたちは、なんでもいいからとにかく考えたいのだ。


 「考えることで、理解とか幸福とか生存とかが達成できる

から」というようなことではなくて、考えることが目的なの

だ。「考える」という病気なのだ。

 なぜそれが病気だといえるかというと、世界で起きている

ことを見れば一目瞭然だ。

 犯罪・戦争・差別・搾取・環境破壊・・・。

 身近なものなら、ケンカ・裏切り・嘘・勘ぐり・

妬み・・・。

 人間の問題のすべては考えることから具体化する。


 考えようとすることで物事を分けてしまうし、物事を分け

てしまうことでさらに考えの泥沼にはまる。ならば、考えな

ければいいかといえば、人間の本能には欠陥があるので、他

の生き物のように本能に従っていればそれなりに生きていら

れるというわけにいかない。本能の欠陥を補うために考えな

ければしようがない。人は考えることから逃れられないけれ

ど、その代償はとても大きい。考えることで自分を滅ぼして

しまったり、いずれ人類そのものを自ら滅ぼしてしまう可能

性もある。そんなこと考えれば分かるけれど、考えに考えた

末に成り立ってる現代で、「考えること」をハッキリと問題

視する人はいない。いても、表舞台には出て来られない。

「そんなこと言う奴は邪魔だ!」と世の中は考えるから


 わたしたちが何も考えなくても、心臓は動くし呼吸もして

いる。ちょっとした病気になっても放っておけば大概治る。

太陽は毎日昇るし、風は流れる。

 世界のほとんどは考えなくても調っているというのが真実

なのに、わたしたちは考えて、自分が気に入ることを正しい

と思い、それに固執する。そして大抵世界からはぐれる。問

題を生む。それは人類の歴史を振り返って考えれば分かる

れど、そこは考えて分かろうとはしない。考えることの害を

どこかで気付いているから、考えて分かりたくないのだろ

う。「当事者は嘘をつく」(by 小松原織香)。


 考えることは基本的に害である。けれど考えざるを得な

い。この上は、考えることで、考えることがもたらす害を減

らすしかない。できる限り考えない生き方を探るしかない。


 ロウのキューブを溶かすように、意識上で分けてしまっ

ものをもう一度繋げてみる。

 分けた理由を取り下げてみる。

 そうして、あらためて「世界」を見てみる。

 「世界」は考えることの外に在って、わたしたちの考えと

は関わりのない調い方をしている。


 考えない生き方。 

 分けない生き方。

 考えることと分けることがもたらす害を、できる限り減ら

す生き方。


 それは「世界」に目を向けることで気付けるのではないだ

ろうか?

 「世界」は(わたしたちのようには)考えていないのだか

ら。

 それでも「世界」は調っているのだから。


 1+1=1


 そういう意識ですべてを見てみる。

 それは、あながち間違ってはいないと気付けるはずだか

ら。



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