2017年1月29日日曜日

うるさいのは?



  《 窓の外で、けたたましいクラクションが鳴った。

    「うるさい!」と思ったけど、思った時には

    もうクラクションは鳴っていない。

  
    では、何がうるさいか?

    どうやら自分の頭がうるさいらしい 》



 これはね。昔、ほんとにあった事なんですよ。

自分の家で本を読んでたら、窓の外でトラックがおもいっきりクラ

クションを鳴らしたんです。反射的に「うるさい!」とキレかけた

んですが、その瞬間に、頭のテッペンまで昇りかけてた血がスッ

と下がって、「あれっ。うるさいと思ったけど、うるさいはずのクラ

クションは、もう鳴っていないよなぁ。はは~ん。オレの頭の中が

うるさいのか。」そう思った。

 この出来事は「アタマってバカだね」と、私が思うようになった

キッカケのひとつです。

 精神分析だとか、仏教だとかに興味を持って、いろいろ本を読

んだりして「余計なことを考えるから、人は不幸になるんだ」と頭

では分かってきてたんですが、この時にそれが腑に落ちたんで

す。身体で分ったというか、肚で分ったというか。


 人はすぐに出来事を追っかけたり、引きずったりしちゃうんです

よね。そして、今ある現実からはぐれて、自分の妄想の中をグル

グル グルグル廻り続ける。

 それが、嬉しい出来事の後、ニヤニヤ笑ってるぐらいなら、まぁ

いいんでしょうが、どちらかといえば妄想の中の不愉快なドラマ

に入り込んじゃうことの方が多い。そうなると、美味しいものを食

べても、味が分からない。家族や友達が面白い事を言っても、ろ

くに聞いていない。うっかりすると、周りの人間に不機嫌をまき

散らす。


  《 起こった時には、終わってる 》


 どんな出来事も、起きた時にはもう終わってます。

 自分で勝手に背負い込んで、いつまでもしんどい思いをしてい

るだけです。 「アタマ」が悪いのです。


 十年前に失恋した事を思い出して、友達が泣いていたら「こい

つバカか?」って思うでしょ。だって十年前ですからね。でも、こ

れが昨日フラれたんだったら、泣いてても仕方ないって思います

よね。だけど本当は、十年前でも昨日でも、もう終わってしまって

いて、今はもう無い事だというのは同じです。 それを同じに出

来ないのが、「アタマ」なんです。

 もう存在してない過去が、今という唯一の実在を喰ってしまっ

てるんです。 こういう状態を、私は 「生きていない」 と言いま

す。 ( ただね、失恋したり、受験に失敗したばかりで泣いてる

若い子に「済んだ事でメソメソと・・・、バカじゃねえの」なんて言う

気は無いんですよ。人間って普通そういうもんだから、それはそ

れで人間らしくてよろしい。人間なんだから、情をまったく無くし

てしまうのは行き過ぎでしょう。もっとも、それで三か月も泣いて

たら、「バーカ。もう死んだら?」ぐらいのことは言っちゃうけど )


 ちょっと重い話になりますが、大切なひとを亡くした人が悲嘆

に暮れますよね。 当然です。 人として仕方がないことです。

時間が必要です。 でも、一年も二年も、場合によってはもっと

もっと長く引きずる人が居ますよね。 私も子供の頃に父親を亡

くしているので、それに免じて言わせてもらいたいんですが。や

っぱり、そんなに引きずるべきではないと思うんですよね。 良く

ないですよ。


 そういう人は、悲しまないのは冷たい人間だと、自分で無意識

に思ってるんじゃないでしょうか? 悲しむことが、愛してた証し

なんだと、どこかで思ってる。 

 でも、悲しむことと愛してることは、別だと思いますよ。

 悲しみっていうのは、失望から生まれるのであって、愛情から

は生まれません。 悲しみというのは、エゴの一面です。 あまり

に悲しみ続ける人は、エゴイストです。


  私は、エゴを完全に否定しませんよ。

 エゴは、人間に作り付けになってます。人間にエゴがあるのは

自然です。 ただ、エゴの僕(しもべ)になってはならない。


 私はこんな風に考えるんです。

 もし私が死んで、家族が何か月も泣いていたとしたら、あの世

から見てて、こう思うでしょう。「おい。おれのせいで、いつまでも

泣かないでくれ。いいかげん機嫌よくやってくれないと、オレは

心苦しくてたまらん」と。

 自分が死んだら、家族に何年でも泣き続けて欲しいなんて

思ってる人がいたら、そんなのロクな奴じゃない。 だっ

て、愛する人には笑顔でいて欲しいっていうのが、当たり前

でしょ?

 だから大切な人が亡くなったら、なるべく早く、程々のところで

泣くのは止めるべきなんです。 それが、愛じゃないでしょうか?  

 その方が、亡くなった人も、あの世で喜ぶと思うんですよ。

 きっと。






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