2020年2月22日土曜日

ロスト「ロストシティ」~何が感染したか?~ コロナ ⑤



 この二週間ほどコロナウイルス関係のことばっかり考えて

いる。コロナウイルスそのものには感染していない(と思

う)が、私のアタマはコロナウイルスの「情報」に感染して

しまったようだ。こまったもんだ。


 身体の免疫システムというのは素晴らしくよくできたもの

なので、お任せしていれば大抵のことは(ジタバタすること

があっても)切り抜けてくれるから、今回のウイルスなんか

も別に何ほどのものでもない。けれど、アタマの方の免疫シ

ステムは、はなはだ出来が悪い。

 身体の免疫システムは入ってきた異物を排除するか壊す

(殺す)けれど、アタマに入ってきた異物  思考の安定を

脅かす情報  は、排除することがまず不可能なうえに、壊

すことも大変難しい。なぜか?

 「情報」というものには実体が無い。実体が無いものを壊

すことはできない。

 「情報」というものは、ある思考とある思考の、関係性の

ことなので、ある「情報」を排除すると、アタマの中の関係

性(ネットワーク)に穴が開いてしまって、非常に気持ちが

悪い。なので、「情報」の排除は難しい(この表現を理解し

てもらうのも難しいかなぁ)。などと、口から出まかせを言

ってみる。


 ということで、アタマの免疫システムは、「異物」が入っ

て来ても、それをどうにかこうにかしてアタマの中の関係性

の中になじませるしかない。その時々の自分に都合のいい場

所に。


 そうして、無理やりなじませて、落ち着かせたつもりにな

って、その場所を別の思考で覆い隠したりしても、その「情

報」の「異物」としての存在は解消できていない。遠から

ず、それは問題を起こすことになる。・・・・・・・・。



 「・・・・・・・」と書いたのは、「面倒な話を始めてし

まったな・・・」という、私の気分の表現です。これはちょ

っと、くたびれそうだなと・・・。

 というわけで、今日はここで止めておこう。



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 一日経った。話題をちょっとずらして再開しよう。


 今から三十年以上前、神戸の元町に「ロストシティ」とい

う、全国的にも名の知れた老舗のライブハウスがあった。ラ

イブハウスといっても、今のライブハウスのイメージとは程

遠い、小さな小さな店で、カウンターの横で身を寄せ合うよ

うにして、バンドがカントリーウエスタンを演奏していたの

です。

 私はこの店が好きでよく通っていた。乞われて、一度弾き

語りのようなものを披露したことがある(緊張して上手くで

きなかったけどね)。その「ロストシティ」は、残念ながら

1987年に閉店した。なぜだと思います?


 1987年1月17日に(神戸の1月17日は厄日だね)、日本

で最初の女性のエイズ患者が見つかった。その女性が働いて

いたか住んでいた所が、「ロストシティ」のすぐそばだった

のです。

 当時、エイズはまだまだ研究がすすんでおらず、「感染し

たら必ず死に至る最悪の病」のように思われていて、ホモセ

クシュアルが罹る病気だと思われていたのですが、その病気

に女性が罹ったのが分かったのです。


 マスコミが騒ぎ立て、週刊誌やクチコミでありとあらゆる

デマが流された。人々は不安に襲われ、「ロストシティ」の

る界隈には誰も寄り付かなくなってしまった・・・。そし

て、閉店・・・。

 他の事情もあったかもしれないけれど、騒動が大きな影響

を与えたのは間違いない。


 この時、エイズそのものは何の被害ももたらさなかったけ

れど、人々の「不安」や「疑い」は現実の社会を恐ろしい力

で変質させてしまったんです。エイズ(HIV) は誰にも感染

しなかったけれど、「不安」と「疑い」は瞬く間に人々に感

染し、沢山の人の人生に困難を与えた。


 あることでマスコミが過熱したりする時は、私はそれに反

比例して急速に冷める。生理的に “引いて” しまう。

 「過熱している」ということは、情報に感染して「発熱」

しているんですからね。近付くと変なものを感染(うつ)さ

れそうで気持ち悪い。それがたとえポジティブな話題でも、

その中に何を持っているか分かったもんじゃない。


 疑り深いというのではない(とは言い切れないけど)。ヒ

ートアップしている人間は、その意味合い通り冷静さを欠

く。個人ならまだしも、組織や集団が過熱しているときは何

をしでかすか分かったもんじゃない。

 「不安」や「疑い」の広がりは、内にこもる「過熱」で

す。その熱は、人の情動にこもり続け、きっかけがあれば、

理性を吹き飛ばして爆発する。暴力的な犯罪の多くや、暴

動・戦争だって、そのようにして起こる。


 マスコミがネガティブな話題で過熱している時などは最悪

のパターンです。その話題の本質以外のところで、恐ろしい

ことや醜悪なことが起こる。そしてさらにいやらしいこと

に、その “ズレ” に人は気付かず、目を向けもしない。世界

の歴史に残るような恐ろしい出来事の多くも、そのようにし

て起きた。


 今回、私のアタマはコロナウイルスの「情報」に感染して

いるけど、他人がコロナウイルスの「情報」に感染してパニ

ックを起こしているのを見ると、私のアタマの免疫システム

はまぁまぁよくやってる方だろうなと思う。『正常性バイア

ス』が係って、誤作動している可能性もあるけどね。


 私のアタマに感染したこの「情報」を、無毒化して「ワク

チン」として、他の人に感染(うつ)せたら・・・。それ

が、最近コロナウイルスのことばかり考えてしまう理由かも

しれない。

 逆に、強毒化させているのかもしれないが・・・。



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