2018年1月21日日曜日

「お前の話は、つまらん!」


 もう何年も前から、面白いCMがほとんど無くなった。

 au の「三太郎シリーズ」、サントリー「BOSS」、「ヒ

ノノ2t」ぐらいが、そこそこ頑張ってる程度だろう。 

 “アイデアの枯渇”、“表現の自主規制”、あるいは端的に

“製作者の能力不足” といったところなんだろうか。



 CMって、やっぱり時代を反映しますから、面白いCMが

無いっていうことは、世の中が面白くないんでしょうね。

 アイデアが出尽くして、行き詰まって来ているのは間違い

ないだろうし、効率優先の上、すべてを想定内に納めようと

する管理主義社会では、表現の冒険はしにくい、その上に、

ちょっとした事をネットで叩かれて、CMがお蔵入りしてし

まったり・・・。面白くなくなって当たり前か・・。



 生前、CMについての評論を沢山して来た 天野祐吉さん

が、大好きで、事あるごとに話題にしていた、キンチョール

のCMがありました。

 大滝秀治さんと岸部一徳さんのこういうやつです。


 大「キンチョールは、なんで水性になったんだ?」

 岸「それは、地球の事を考えて・・・

 大「つまらん! お前の話は、つまらん!」

 静かに “エコ” について語ろうとした息子(岸部)の言葉

をさえぎって、父(大滝)が叫ぶんですね。

 覚えている方も多いでしょう。

   私も大好きでした。


 「猫も杓子もスキを見せると、すぐに “エコ” なんて言う

けれど、いい子ぶってるだけで全然本気じゃないだろ? ヘ

タすりゃ金儲けのネタにしかしないだろ?」

 製作者のそういう声が聞こえて来ますし、その企画にOK

を出した、キンチョーという会社も素晴らしい!

 キンチョーのCMは、今も頑張っているけれど、残念なが

らあのCMを越えることは、もうできないでしょうねぇ。

 「オモシロCM」を作る製作者たちは、あのCMを思い出

すと、ため息が出てしまうのではないでしょうか?

 「これをやられちゃ、もう、しょうがない。」と。


 CMが最高に面白かった時代は、あのCMより少し前だと

思います。だからこそ、面白くなくなり始めたCMの世界と

世の中に対して、「つまらん!」と叫ばずにはいられなかっ

たんでしょう。

 そして今や、ほんとうに「つまらん!」。


 つまらん理由は、はっきりしている。

 CMに限らず、すべてにおいて、現代人はコントロールし

ようとし過ぎです。

 なんでも、想定内に収めたい。自分の思い通りにしたい。

人間の思い通りにしたい。自由にしたい・・。

 その欲望が管理主義となって、かえって自分たちをがんじ

がらめにしている事に、何故気付けない?

 何処が自由? 

 何が思い通り? 

 現代は、“用意された自由” の中で、“教え込まれた希望”

 を手に入れて、「嬉しいつもり」になってるだけだ。

 (今に始まった事ではないが、もう限界まで酷くなってる

んじゃないのかなぁ)


 それからもう一つ、CMのセリフで好きなものがありま

す。

 確か20年近く前のJTのCMだったと思うんですが、山

崎努が出ていたシリーズで、“毎回、登場者がちょっとした

トラブルに見舞われるが、運よくそれを回避する” という設

定になっていて、それを見ていた山崎努が、毎回〈決め台

詞〉を言います。

 「ひとまずは、おしあわせに」と。
 

 いつも、「いいなぁ」と思いながら見てました。
 

 世の中の〈しあわせ〉は、全部「ひとまず」です。

 自分に訪れる “変化” の中の、気に入ったところだけを

〈しあわせ〉だと思うだけです。

 それは、変化の中のある一瞬でしかありませんから、すぐ

に消えます。しばらくは、その印象を舐め回して楽しむこと

も出来るでしょうが、「ひとまず」でしかありません。

 その「ひとまず」を追い掛け回して、 人は世の中を右往

左往します。

 さらに、その「ひとまず」が、「いつまでも」になるよう

に固定しようとして、ガチガチに管理しようとします。

 「つまらない」ですね。


 “ガチガチに管理した世界” には、〈面白い事(イレギュ

ラーな事)〉を詰める余地が在りません。詰められません。

 だから「詰まらない」。


 “想定通り・希望通り” の世界は「安心安全」でしょう

が、“思いがけない事” も 、“楽しいハプニング” も無く、そ

の結果としての “面白い事” もありません。

 そんな世界や人生が実現したとしても、〈しあわせ〉と思

えるのでしょうか?

 また、当人の〈しあわせ〉の問題だけではなく、“想定通

り・希望通り” にする為には、“想定外・希望外” のものを

排除しなければなりませんから、必ず “他者” (自分の気に

入らないもの)にしわ寄せが行きます。それが人間とは限り

ませんが。


 キンチョーのCMも、JTのCMも、世の中の表面上の 

“正しさ” や “しあわせ” をからかっていて痛快ですが、あの

頃すでに、からかいたくなる世の中だったという事です。

 そして今や、からかう事さえ許されない程、世の中の管理

は厳しくなっているのでしょう。


 今回のブログを観た人に、「お前の話は、つまらん!」と

言われても、たいして気にならないでしょうが、もしも「お

前の話は、許せん!」と言われたら・・・、ため息が出るで

しょうねぇ。「こんなところにまで、窮屈な世の中はひろが

っているんだ・・」と思って。




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