2020年12月13日日曜日

ポンコツだけど生きてみる



 昨日ブログに載せた、まどみちおさんの詩の一節。


   たとえすべてのひとから みはなされた

   ひとがいても そのひとに


   こころやさしい ぬのきれが一まい

   よりそっていないとは しんじにくい


 「すべてのひとからみはなされたひと」に、まどさんは思

いを致す。

 そばにいなくても、会った事も無くても、存在すら知らな

くても、存在していないとしても、思いを寄せる。この世界

にそのような人は常に必ずいるからだ。そばにいることはで

きなくても、何もできなくても、その苦しみ悲しみに、寄り

添う。その苦しみ悲しみを自分も少しだけ苦しみ悲しむ。そ

れはなんにもならない。なんにもならないけれど、そうせざ

るを得ない。だからそうする。ともに人間だからだ。

 「こころやさしい一まいのぬのきれ」は、まどさん自身の

ことだ。


 私が初めて手にしたまどさんの本は『いわずにおれない』

というタイトルだ。まどさんへのインタビューと、代表的な

詩が収められている。それを時々取り出してはパラパラとめ

くって、つまみ食いのように読む。気持ちが安らぐ。ほのか

な喜びが湧いてくる。こういう人が生きていたこと。するど

く、暖かな言葉を遺してくれたこと。その言葉に自分が触れ

られることを感謝する。


 わたしたちは皆、いわずにおれなくなってものを言う。せ

ずにはおれなくなって何かをする。けれど、できることな

ら、暖かな言葉をいわずにおれないようでいたい。優しい行

いをせずにおれないようでありたい。そう願うが、「いわず

におれない」「せずにおれない」のですることだから、自分

の願い通りにはならない。時に誰かを傷付ける・・・。


 まどさんの中の「誰かを傷付けてしまう苦しみ」が、あの

詩を書かせたのだろうなと思う。

 「すべてのひとからみはなされた」ポンコツの誰かと、

「誰かを傷付けてしまう」ポンコツの自分。ポンコツ同士、

ポンコツの悲しさに共感する。

 いわずにおれない。


 ポンコツがポンコツに語りかける。

 「ポンコツだけど、それでもいま生きている・・・」


 まどさんの言葉が、ポンコツの私にも届く。


 そしてまどさんから出て来た言葉が、私を通ってまた誰か

に届く。


 きかずにおれない。

 いわずにおれない。


 死なずにおれない。

 生きずにおれない。


 ・・・・ポンコツだけど生きてみる。




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