2020年3月11日水曜日

どんな風が吹いているのだろう。



 今日は3月11日。あれからもう九年が経ったんだ。


 何か書こうとしたけれど、どうにも考えがまとまらない。


 私は、震災以前も震災後も東北には行ったことが無い。震

災後、あの被災地に一度立ってみなければと思いながら、そ

の縁がなく、今まで来ている。


 被災地の多くは今も更地が広がっているようだけど、あそ

こに立った時、自分が何を感じ、何を思うかは八割がた想像

がついている。まず感じるのは風だろうと思う。少し不躾

で、思いやりを欠く風が吹いているだろうと思う。

 そう思うのは、阪神大震災での自分の経験による。

 震災後、自分が元住んでいた町を訪れた時に感じたのは、

「風の吹き方が違う」ということだった。以前とは違う方向

から、違う巻き方で、なじみのない風が吹いていたのだ。そ

して、そのちがう風に感じる違和感に、心がざらつく・・。

 「人間の身体って、こんなことまで感じながら生きている

んだ・・・」と、当時驚いたものだった。


 建物が壊れ、新たな建物が立ち、風の流れが変わるのだ

が、どうもそれだけではない。その土地の自然の在り様や、

人の営みの大きな変化は、そこに吹く風の「肌触り」という

ようなものを変質させるように思う。


 九年が経ったけれど、被災地の多くの場所では、まだ心を

少しざわつかせるような風が吹いているんだろうと思う。

 今年も、もうすぐ春の暖かな風が吹くだろうが、その暖か

さの中にも、どうしても無視できないわずかな「無情」がひ

そんでいるような気がする。


 春、あの土地に立つ人が、心から風を暖かく感じられる

時、本当の再生が始まるのだろう。そんな気がしている。





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